📖 第三話:「消えたエメラルド」②「蘇る記憶」
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- 2月26日
- 読了時間: 3分
更新日:2月28日

第三話②:「蘇る記憶」
「……エメラルドは、妻のものだった。」
男性は指輪を手にしながら、ゆっくりと語った。
「2年前、妻は事故で亡くなりました。それからずっと、この指輪を仏壇に置いていたんです。でも……2週間ほど前、気づいたらエメラルドだけがなくなっていました。」
リヒトは黙って、指輪を見つめる。
「家には私しかいませんし、誰かが盗んだ形跡もない。でも……指輪ごと消えたのならまだしも、なぜ石だけがなくなったのか……それがどうしても分からなくて。」
男性の表情には、戸惑いと悲しみが入り混じっていた。
「だから、新しく石を入れようと決めたんです。妻への供養として。」
リヒトは静かに頷いた。
「エメラルドがついていた頃のことを、もう少し詳しく教えていただけますか?」
「……正直、あまりよく覚えていないんです。」
「では、エメラルドの形や色、何か特徴的なことは?」
「そう言われても……」
男性は指輪を握りしめ、目を伏せた。
その瞬間――
彼の中で、ある記憶が蘇った。
――2年前、妻との最後の言い争い。
「あなたはいつも忙しい。私は、あなたの何なの?」
「そんなことを言われても、仕事なんだから仕方ないだろう!」
「……だったら、もういい。」
彼女はそう言って、薬指の指輪を外し彼に投げつけた。
指輪は、彼の足元に転がった。
彼は言葉を失った。
「……どうせ、あなたにとってはただの指輪でしょう?」
彼女の瞳には、悲しみが滲んでいた。
「違う……!」
彼は手を伸ばした。だが、その時にはもう、彼女は背を向けていた。
――それが、彼女との最後の会話だった。
喧嘩で数日、口をきかなかった。
そして彼女は事故で亡くなった。
彼は後悔し続けた。
指輪を見つめることもできず、ただ仏壇に置き、目を背け続けた。
そして……2週間前、気づいた時にはエメラルドがなくなっていた。
「……思い出した。」
彼は、震える声で呟いた。
「エメラルド……あの時、妻が外して僕に投げつけたんだ。 多分その時に外れてしまったんじゃ・・・」
リヒトはそっと、指輪を手に取る。
「ならば、ご自宅のどこかに残されている可能性が高いですね。」
「……そうかもしれない。」
「奥様が最後に触れたもの、大切にしていたもの……思い出の品の中を探してみてください。」
男性はゆっくりと頷いた。
「……分かりました。探してみます。」
彼の表情には、先ほどまでとは違う決意が浮かんでいた。
🔜 次回:「エメラルドの行方」妻が最後に触れたエメラルドはどこに?彼は思い出の中から、答えを見つけ出せるのか――。
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